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kkknrwuh1989 2013-9-22 12:30:07
ましてや陰《かげ》の政臣が
それに、下の名前で呼ばれるのは幼いときだけで(神になればアマノメさま[#「アマノメさま」に傍点]であり)、名前それ自体にも意味はないが。「……して、大炊御門《おおいみかど》の誰かには、確かめてみたのか?」「いえ、それは、自分からはできません」 政臣は重厚な声できっぱりという。「ふむ、それもそうじゃのう……」 氏子たちのことは、桑名の本家が管轄《かんかつ》していて、竜蔵が(ましてや陰《かげ》の政臣が)直接動けるわけではない。氏子たちからの寄進も本家が一手に集め、その中から、竜蔵や陰たちに必要経費が渡されるのだ。もっとも、それは莫大な金額であるが。「けどじゃ、このことを本家に話すと、また大事《おおごと》になりよるぞう」「……然様《さよう》でございますな」 危なっかしい埼玉《とうきょう》からは出て、桑名へ戻って来い。そんな話になるのは目に見えている。だが、本家が必ずしも安全ではないと踏んでいるから、竜蔵はこうして他所《よそ》に居座っているわけだ。「すると、この真柴とやらは、どこかに逃げておるのか?」「いちおう、表向きはそうなっておりますが、自分が思いますに、この教団の内部《なか》で匿《かくま》われているかと,ロエベ 財布 レディース。それに、真柴を恭子さまの娘だとしますと、真柴が、教団の一幹部にすぎないといった話自体が、おかしゅうございます」「ふん、それもいえるのう。……して、その教祖とやらは、どういった人物なのじゃ?」「女性、歳は三十歳ぐらい、それ以外のことは、まったく分かっておりません,ロエベ バッグ。ですので、傀儡《かいらい》か、もしくは、真柴本人といった可能性も、あながち[#「あながち」に傍点]……いかがいたしましょう、手の者を何名かつけてみましょうか?」「いや、その必要はないわ。いずれ警察が調べてくれおるじゃろうから。もらった方が早い」「……確かに」 生駒が撮影した写真もそうだが、警察の捜査内容は、ここ森の屋敷には筒抜けのようである。「それと、このようなことを、自分が申すのは何でございますが、アマノメの御[#「御」に傍点]神さまに、一度、見ていただくというのは?」「いや、それはさせとうないわ——」 竜蔵は厳《きび》しい口調でいい、「この真柴が恭子さんの娘だったとして、そして万が一、相手を目覚めさせてしまうようなことがあったら、それこそ取り返しがつかぬ」「はっ、然様《さよう》でございますな」 ——政臣は、深々と頭《こうべ》を垂れていった。 竜蔵は、その真柴(恭子の娘)と同じ境遇にいた女性のことに、ふと、思いが翔《と》んだ,西園寺《さいおんじ》靖子《やすこ》である。 その彼女とは、子供のころには、ふたりしてよく遊んだものだ…… 西園寺靖子は、戸籍上は竜蔵と同《おな》い歳《どし》の妹だが、実際は天目マユミの先代《ちちおや》の姉である。マサトからいくと大姨《おおおば》にあたる。そしてこの屋敷に逗留《とうりゅう》している西園寺|希美佳《きみか》の祖母でもある。 ……城の屋敷にふたりで忍び入って、桑名の大人たちから怒られたこともあった。ままごともやったかな。けど、お転婆《てんば》な子じゃなく、どこか夢見がちな少女であった。 竜蔵と靖子は、誕生日が二ヵ月と違わないから、物心がつくと、おかしいといったことに気づく。そしてひとつ屋根の下で育っていきながら、やがては互いの歯車の中に身をゆだねていき、七十年以上の年月《としつき》が経《た》った。 最近、会っておらぬな、どうしておられるかのう。 ——リンリン、リンリンリンリンリン。 虫の声が、秋の夜風に揺れていた。[#改ページ] 5 麻生まな美の家は、埼玉県の蕨[#「蕨」に傍点]市にある。 もっとも、南に向かって十五分も歩けば荒川《あらかわ》で、その対岸は東京都だ。それに、最寄《もよ》り駅の戸田公園《とだこうえん》から埼京線《さいきょうせん》を使うと新宿《しんじゅく》まで二十分(山手《やまのて》線に乗り換えて原宿《はらじゅく》まではプラス四分)だから、胸を張って埼玉県人だといえるかどうかは微妙である。 けど、その地名はお気に召しているようで、それは漢字が難しく、まずほとんどの人が書けない、それどころか読めないことに、まな美はひそかな喜びを感じている。 ——これでワラビと読み、つまり若葉を食用にする羊歯《しだ》の一種の蕨《わらび》である。それに、わらび、といった情緒ある語感も気に入っている。 どこかの団体がやった意識調査《アンケート》だが、日本語の中で、その語意と語感を照らし合わせて、日本人がもっとも美しく感じられる言葉は何か?……わらび、も上位に入っていただろうが、その一位に輝いたのは、なぎさ、であった。波打ちぎわの意である渚だが、そのことを知ったまな美は、将来結婚して女の子が生まれたなら、渚、なぎさ、ナギサ、そのどれかを名づけようと心に決めた。 そして仮に、まったくの仮の話だけど、土門くんと結婚したなら、土門渚……売れない歌手みたーい。じゃ、マサトくんとなら、天目ナギサ……うーん、これも語呂がいまひとつだわね。そうこう考えていると、麻生なぎさ……けっきょく、それが一番いいことに気がついた。だったら、婿養子かな、それとも夫婦別姓にしようかしら……十七歳なので、そういったこともそろそろ考える年頃だ。 家は集合住宅《マンション》で、七階建の最上階にある。 いわゆるペントハウスだが、上からの足音が聞こえてこないことを除けば、下の階と作りに差はない。が、百平米ほどの4LDKに、両親と独り娘の三人家族だから、そこそこに広い。
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